漫画家・野村亮馬さんが描くSF漫画『第三惑星用心棒』。
飄々として明るい主人公アンドロイドが、どこかのんびりした空気感に満ちた29世紀の地球を旅しながら、バウンサー(用心棒)稼業に挑む様子を描いた作品です。
本作品は世界観からして緻密に設定された「しっかりとしたSF」ですが、それに反して空気感はとてもゆるめ。
朗らかと言ってもいいくらいにのんびりした空気の中、難しいミッションに挑む主人公・エルシーがクセになるおすすめ漫画です。
なお本作品は電子書籍のみの配信で、作者の野村さんの個人レーベルである馬頭図書からの出版。
2022年1月現在、2巻までが刊行されています。
本記事の執筆時点で、『第三惑星用心棒』は既刊の2巻までがKindle Unlinited にて配信中です。
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漫画『第三惑星用心棒』のあらすじ・舞台設定
舞台は西暦2882年の地球。
すでに地球は人類の中心地ではなく、残された人々は国境も政府も失われた世界で、協力しながらのんびりとした生活を営んでいた。
主人公のエルシーは月面生まれの女性型アンドロイド。
彼女の仕事は、人工知能であるセントラルコーディネーターからの依頼のもと、地球上に残された「迷走兵器」を処理すること。
かつて紛争用に作られた兵器たちは存在意義を失った今も、目標を探して地球上を孤独にさまよっていた。
エルシーは相棒で鳥型の加工動物のタミーとともに、コーディネーターから指示された場所におもむき、迷走兵器の回収に向かう。
以上が『第三惑星用心棒』の世界観。
この舞台設定を背景に、各話1話完結形式でエピソードが語られていきます。
ここが面白い!漫画『第三惑星用心棒』の魅力
ここからは本作品の魅力をご紹介していきます。
主人公のアンドロイド「エルシー」の明るさ
主人公の女性型アンドロイド「エルシー」は迷走兵器の処理のために各地を放浪する用心棒(バウンサー)。
アンドロイドたちを統括する人工知能「中央幹事」(セントラルコーディネーター)からの指示を受け、戦闘用兵器の処理に向かいます。
ここまでの設定を聞くとまるでSFらしいSFですが、独特なのがエルシーのキャラクター。
エルシーはもともと接客用のアンドロイドとして27世紀に月面で生まれたという設定で、アンドロイドらしからぬ明るい性格に加えてよく喋るのが特徴です。
ユーモアにあふれていて人を楽しませることが好きなエルシーは、人との挨拶がわりに歌を1曲歌うのがお決まり。
背中のトラベルギターで、リクエストに応じて20世紀の曲まで弾きこなします。
他にもセントラルコーディネーターに「コディー」というニックネームをつけたり、また仮想世界での会議では場面設定をあえて海賊船の船上にしてみるなど愛嬌はたっぷり。
相棒のタミーを背中に、旧型の自転車に乗って目的地に向かう姿は、まるで自転車でサイクリングを楽しんでいる女子のようです。
そしてこれらの雰囲気が任務においても変わらず、迷走兵器を前にしても普段どおりが維持されるのがエルシーらしさ。
絵本のような絵のタッチとエルシーのこのキャラクターこそが、作品の雰囲気を決定づけていると言えるでしょう。
ぜひ皆さんにもエルシーの人となりを味わっていただきたいと思います。
緻密なSF設定とのんびりとした世界観
『第三惑星用心棒』を読み進めて驚かされるのが、SF設定の緻密さ。
作中で語られる断片的な設定はもちろんのこと、エピソード間にあるおまけページに書かれたイラストと設定の細かさはなかなかのもの。
このページだけでも楽しめるくらいで、SFとしてのバックグラウンドの骨太さを感じさせてくれます。
その一方で、作中では世界観が大上段から語られることはありません。
あくまで生活者の日常を通しつつ、少しずつ断片が積み上がっていくような語り口。
性急さから距離をおいた手法は、まるで知らない土地を散策するうちに少しずつその土地のことが分かっていくかのよう。
エルシーとともに旅をしているような感覚が楽しめるのもこの作品の魅力です。
戦闘用兵器との本格的な戦闘シーン
また本作品の見どころの1つが、エルシーが挑むミッション。
コーディからの依頼は主に迷走兵器への対応ですが、相手は時の流れの中で放逐され、コンディションもはっきりしない戦闘兵器。
戦闘状態におちいることも多々あるわけですが、現地の用心棒と協力しながら制止にいどむ姿に、ついドキドキしながら惹き込まれてしまいます。
というのも相手の兵器はデザインも装備もかなり本格的。
対するエルシーは人型アンドロイドということで、どうなることかと読んでいて心配になりますが、そこはエルシーのお手並み拝見なところ。
相手がタチコマみたいな兵器であっても攻殻機動隊みたくならないのがこの作品の色で、派手な戦闘を避けて急所だけを狙うかのような淡々とした戦闘シーンがむしろ本格的に映ります。
また協力する現地の用心棒は人型でないものが主流で、戦車型など形態も多種多様。
メカニック的な楽しみ方ができるのも、この作品の魅力ですね。
漫画『第三惑星用心棒』の感想・レビューまとめ
以上、ここまで『第三惑星用心棒』の魅力について紹介してきました。
『第三惑星用心棒』を読んで漠然と私が感じたのは、「ハヤカワSFなどのSF小説好きな方には好きになってもらえる漫画」ということ。
断片的な描写から読者の脳内で世界観を積み上げていくような作風は、小説的な味わい方に通ずるようなものがあるように感じました。
とりあえず本記事執筆時点で既刊が2巻までで、続刊が待たれるところ。
(公式サイトを拝見したところ、現在3巻の色塗りをされているとのことです。フルカラーなので大変……!)
Kindle Unlimitedの対象書籍となっているこの機会にぜひ楽しんでみていただければと思います。
(いつ対象から外れるか分からないので、なるべくお早めにどうぞ)
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