街の片隅にひっそりと建つ謎の寿司屋では、奇妙な主人によって毎夜「巨大数」の講義が繰り広げられていた—。
鬼才・小林銅蟲先生の描く超インフレ数学漫画『寿司 虚空編』。
奇妙かつシュールな筆致で「巨大数」の世界を描いた異色中の異色の漫画です。
漫画でありつつも、作中で展開されるのはひたすら難解な関数と数式。
入れ子構造の関数によって爆発的に膨れ上がる桁数と自己言及的な再帰構造にめまいがしそうになりますが、この苦痛こそ快感の入り口。
独特の世界観に貫かれた本作品を、ぜひ皆さんにも味わっていただければと思います。
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漫画『寿司 虚空編』のあらすじ・世界観
ある街の片隅で営まれる古い寿司屋。
客足もまばらなその店のカウンターで、年老いた主人(親方)によって今日も数学の1ジャンル「巨大数」が語られていた。
親方の話に耳を傾けるのは弟子の青年マシモ。
もう一人話に加わるのは、霊体となった親方の一人娘の孑孑うるか(ぼうふらうるか)。
今夜も客のいない店内で、巨大数の概念が加速していく—。
本作品は基本的にストーリーらしいストーリーはなく、上記の3人を中心に会話形式で話が進んでいきます。
1話完結ではありますが、新たに出てくる巨大数はそれまでに説明された概念を前提とするのがとても数学的。
理解が追いついてないと普通に分からなくなるので、分かるまで読んでから次に進む(または自分を騙して分かったことにする)という楽しみ方になります。
漫画『寿司 虚空編』はここが面白い!魅力を解説
この『寿司』という漫画は、特異じゃない部分がないのでは?と思えるほど全てが特異。
しかしその特異さこそが強烈な作品の個性となっています。
ここでは主に3つ、作品の魅力について分かりやすく紹介していきます。
難解かつ知的好奇心を刺激される巨大数の世界
この漫画の主題となっているのが「巨大数」。
巨大数とは日常で使われるよりも圧倒的に大きい桁の数のことで、いわゆる「天文学的な数字」。
研究者たちが日夜研究に勤しむ、れっきとした数学ジャンルの1ジャンルです。
たとえば観測可能な宇宙の体積は、およそ1.6 × 1081m3で、もちろんこれは巨大数のカテゴリー。
巨大数論では、このような爆発的な桁数を持つ数字をいかにコンパクトに「関数」として表現するかを扱っており、作中ではその概念や証明が語られていきます。
ちなみにこの漫画で扱われる巨大数の関連概念は、グラハム数、ふぃっしゅ数、アッカーマン関数など。
これらがどのように設計され、後続の巨大数にどのように組み込まれたのかを知ると、より一層知的好奇心が刺激されるはずです。
入れ子が反復!めまいがしそうになるほどの巨大数計算
巨大数では膨大な桁の数字をコンパクトに扱う必要があるため、関数が用いられます。
この関数が入れ子で使われることが多く、この操作を行うことで展開が連鎖して爆発的に桁数が膨張していくのです。
(ここで言う入れ子とは、ある関数の中に全く同じ関数が入ること。それが無限に続くことに……。)
関数には所定の扱い方が設定されていますが、何分初見。
理解しながら入れ子構造の関数を解きほぐしていると、頭がパンクしそうになってきます。
合わせ鏡のように無限に続いていきそうな関数を追うためには、紙とペンは必須。
論理の筋をたどる苦行を耐えるうちに、きっと妙な快感が生まれるでしょう!
シュールで不条理、唐突に異形が登場する奇怪な世界観
『寿司 虚空編』の世界観や登場人物たちはかなりシュール。
キャラによっては風貌はもとより言動までもが異常で、まともに読んでいると精神が混沌に足を踏み入れそうになります。
またエピソードらしいエピソードが出てきたかと思えば内容に脈絡がないのも平常運行の範疇。
「寿司」なのになぜかプロレスが始まったりなど、なかなかです。
話題の急な切り替わりや妙な表現の変換など、つらぬかれる独自の表現文法にはイニシエーション的な苦痛と隣り合わせの快楽があります。
異形のクリーチャー(しかも書き込みがかなり細密)が唐突にあらわれるのもお約束。
目でトリップしそうになる感覚をぜひ体験として楽しんでいただければと思います。
漫画『寿司 虚空編』感想・レビューまとめ
作者の小林銅蟲先生の作家性ゆえというところもあるのですが、かなり個性の強い独特の作風です。
描かれるテンポも独特のため、文法的なものを理解することが最初の通過儀礼かもしれません。
しかしその先にはある世界は、圧倒的な個性と未知の数学的領域(もちろん既知の方もいらっしゃるかもしれませんが)。
料理漫画『めしにしましょう』とはまた異なる、マスに照準を合わせてない抜身の小林銅蟲作品をぜひ楽しんでみてください。
なお本記事執筆時点で、漫画『寿司 虚空編』はKindle Unlimitedの対象本。
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